CLOSE UP コラム | IoTの課題(2)

IoTの課題(2)

CLOSE UP 事例

2016年11月07日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

IoTの急速な台頭でさまざまな恩恵が期待されている一方、実際にIoTを運用する局面では、ビジネス上の課題も散見している。

一部大手企業ではIoTを活用したビジネスが登場しているものの、市場全体ではビジネスモデル検証が開始された段階であり、民間の調査では「IoTの専門部署やグループが存在する企業」は10.1%、さらに「ビジネスとしてIoTを利用している企業」は4.9%にすぎないという結果が出ている。

今回は、ビジネスでIoTに取り組む際の課題を考察する。

IoTビジネスの課題1―システムインテグレータがいない。

ビジネスとしてIoTに取り組む場合、最大の課題は、優秀な人材の確保である。

まずはシステムインテグレータである。

先ごろ、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が、各種デバイスのセンサー情報の収集から、蓄積・可視化、制御・管理の自動化まで、IoTシステムに必要な全ての機能を一体化し、クラウド上の共通プラットフォームである「IIJ IoTサービス」を発表した。

新サービスは、IoTシステムに必要なデバイス管理やネットワーク、セキュリティ、クラウドなどの各要素と、それらを統合的に管理する機能を提供。これまで個別に機器やサービスを調達し、組み合わせて構築していたIoTシステムを1つのサービスとして提供することで、ユーザーは低コストかつ短期間で導入でき、新たなビジネス創出へ注力することができるとしている。

同社では、これまでユーザー企業のITシステムを構築してきたシステムインテグレータ(SIer)にIoTを手掛けた経験が乏しく、またユーザー企業が自らIoTに取り組もうとしても、ITについてSIerへ依存してきたために知見が乏しいという日本独特の産業構造に着目。

同社では、SIerだけでなくユーザー企業も自らIoTを活用したアイデアを生かせるようなプラットフォームを提供すべき、と考え、今回のサービス提供に至ったという。

IoTビジネスの課題2―データサイエンティストがいない。

ビジネスとしてIoTに取り組む場合の課題として、次に、データサイエンティストの確保が挙げられる。

IoTでは、ウェアラブルデバイスやスマート自動者などIoT製品から生み出される膨大なデータ量は、分析してフィードバックすることで初めてビジネスに活かすことができる。

したがって、データを適切に分析するデータサイエンティストが求められている。

しかしデータサイエンティストは世界中で人材不足が叫ばれており、各業界において争奪戦や人材教育が活発化しているのが現状。

将来的にはIoT製品から取得出来るデータはAI(人工知能)が分析を行いユーザーにフィードバックを返すという仕組みづくりも始まってはいるが、AI自体が、まだ本格的な実用段階にはない。

データサイエンティストの人材不足を解消する兆しとしては、データ分析モデルコンペンションサイトの「Kaggle(カグル)」がある。

このサービスは、世界中で登録されている30万人のデータサイエンティストに対して匿名で自社データを提供することで、最適な分析モデルのコンペを行える。これによって、ユーザー企業はデータサイエンティストを確保することなく、自社データの最適な分析モデルを構築することができる。

こうした需要はますます高まる傾向にあり、近い将来データサイエンティストとデータ分析を依頼する企業をマッチングしたクラウドソーシングなどがリリースされるかもしれない。

IoTビジネスの課題3―エンジニアがいない。

最後にIoTを実現するためのエンジニアの確保が課題となる。

IoTを実現するエンジニアには、アプリケーション開発、データ通信、ネットワーク、サーバ、データセンターなど広範囲な技術が求められ、こうした技術を全てカバーしたエンジニアを確保するのは非常に難しく、また各分野のスペシャリストを確保するとなるとかなりの人件費が発生する。

この課題には、最低限のエンジニアを確保しつつIoTBaaSやMBaaSを活用するという手法がある。BaaS/MBaaSはサーバサイドの技術が不要であり、IoTを構築するシステムインフラをクラウドで提供しているため、最小限のエンジニアリソースでIoT製品開発に取り組めるということにある。

こうしたインフラの整備によって、ビジネスにおけるIoTの課題が解決され、製品開発がより容易に活発化されるだろう。

https://www.imkk.jp/blog/five-issues-of-iot.html
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1607/25/news044.html


著者プロフィール

オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス 「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。

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