CLOSE UP コラム | センサーデータから故障を予測しコストダウンに成功~大手医療機器製造メーカーA社様(後編)

センサーデータから故障を予測しコストダウンに成功~大手医療機器製造メーカーA社様(後編)

CLOSE UP 事例

2015年10月05日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

センサーデータにフィルターをかけて、予測精度を上げる

ビッグデータを分析し、事前に機器の故障を予測する手法としては、モデリングが一般的です。モデルとは「データ全体をわかりやすく表したもの」とも言えます。モデルをもとに過去の事象を分析すれば、高い確率で未来予測が可能になるという仕組みです。

モデリングにおいて力点を注ぐのは、いかに予測精度のあるモデルを作るか、という点になります。

モデリングフロー

A社様のケースでは、積極的にオープンソースのツールを採用しました。Pentaho(ペンタホ:ビジネスインテリジェンス(BI)ツール)でデータの変換や処理を行い、RapidMiner(ラピッドマイナー:データマイニングツール)でモデル・レポートを作成しました。

さらに今回分析するのは、センサーデータという独特のデータです。センサーデータは波形がなだらかではなく、異常値と正常値の判定が独特です。そのため、フィルタリングをかけてデータを整形し、予測精度をあげていきました。

「担当者の経験」とビッグデータのコラボレーション

A社様のケーススタディの成功のポイントは、ビッグデータと「担当者の経験」とのコラボレーションです。

ビッグデータをモデル化するにあたり、A社様の研究所の方にプロジェクトに参加していただいたのです。実際に機器を設計した方に構造上故障が起こりやすい箇所をヒヤリングさせていただき、さまざまなディスカッションのなかで故障の事前予測を行いました。

ビッグデータはおおいなる可能性を秘めていますが、すべてをデータという物差しだけで図ることはできません。人間の経験や勘にもとづいた叡智は、ときにそれを凌駕することもあります。

とくに今回のような精密機器については人智によるノウハウも重要になりますので、積極的に意見を取り入れて、モデルを作成しました。

 故障の事前予測で、千万円単位のコストダウンに成功

故障予測レポートをメンテナンス担当者にメール配信するようになってから、故障予測の精度が格段に上がりました。

この時点でも、人智とデータのコラボレーションになっているのが特徴的です。最終的な判断はメンテナンス担当者が行いますが、メンテナンス担当者の判断を支援する材料として故障予測レポートを積極活用していただいた結果、不要な訪問が減り、パーツコストが千万円単位でコストダウンしました。

当初は1機種だけに限定してビッグデータを分析してモデル化し故障予測レポートを提出していたのですが、明確な成果が出たため、2015年現在は対象機種が増えています。

人智のノウハウをいかにデータに組み込むかは、データサイエンティストの裁量によるところが大きい手法です。

KSKアナリティクスではレポートとモデルを提出して終わるのではなく、今回のケースのように、クライアントやエンドユーザにプロジェクトに加わっていただき、プロトタイプをつくってアジャイル的にアプローチしながら、予測精度をあげていくことも少なくありません。常に、現実の課題に対するソリューションを提供することを心がけています。

【今回の事例のまとめ】
―過去2年蓄積分のセンサーデータの分析、属性の絞り込み、関連性をモデル化。
―予測モデルの作成とレポーティングにより、メンテナンス担当者への自動通知。
―さらに、予測レポート結果のフィードバックを取り込むことで、より予測精度の向上を継続的に高めていくように仕組みを作成。


著者プロフィール

オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス 「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。

最新TOPICS

【IoTで空港を快適に】スイスのジュネーブ空港「乗客が行列に並ぶ時間を半減」「業績を前年度の5倍以上にアップ」に成功---BluetoothとWi-Fiセンサーを活用(2016年06月21日 10:03)

スイス国内で2番目に利用者数の多いジュネーブ空港は、 「乗客が行列に並ぶ時間を半減」「業績を前年度の5倍以上にアップ」に成功している。 【改善方法】 ・施設内でBluetoothとWi-Fiセンサーを活用 ・乗客のリアルタイム計測/高度データ分析 ・空港スタッフ数の最適化 ・セキュリティチェックの可視化 ・Wi-Fiセンサーは空港内各所に設置  →行列に並んでいる人数/待ち時間...

最新CLOSEUPコラム

関連タグ

バックナンバー

関連記事

無料資料プレゼント

2021/03/04 セキュリティDAYS Keyspider資料

講演資料を見るには、 プライバシーポリシーに同意して、送付先メールアドレスをご入力しご請求ください。

またご入力いただきました情報は、当該資料の作成・提供企業とも共有させていただき、当社及び各社のサービス、製品、セミナー、イベントなどのご案内に使用させていただきます。

本資料を見るには次の画面でアンケートに回答していただく必要があります。



セミナー講演資料公開中

世界最高峰のリアルハッカー集団を活用した脆弱性対策 ~米国政府も採用、脆弱性診断・ペネトレーションテストを大胆に変革する方法~

文書を作る過程における情報(Slack/Teamsでのコメントなど)をどう管理、共有するべきか? ~新しい文書情報管理の考え方~

正社員・非正規社員の離職率を下げるためには? ~主観的な定性評価から、定量的なジョブ型評価への転換の重要性~

  • 書籍

Analytics News ACCESS RANKING

facebook

twitter