「マーケティングオートメーション(Marketing Automation:MA)」とは、デジタルマーケティングのプロセスの一部を自動化するソリューションプラットフォームである。
①マーケティングオートメーション(MA)概要
・「マーケティングオートメーション」の定義
・「マーケティングオートメーション」基本説明
・経緯
・マーケティングオートメーションのメリット
・マーケティングオートメーションを導入して得られる主な効果
・マーケティングオートメーションの運用方法
・マーケティングオートメーション導入時の注意点
②マーケティングオートメーションツール
・「マーケティングオートメーションツール」とは
・マーケティングオートメーションツールの主な機能
・クラウドサービス
マーケティングオートメーションは、次のように定義されている。
マーケティングオートメーションとは、リード(個人情報取得済の見込み客)の獲得から、営業パーソンへ引き渡すまでのマーケティング業務について、ツールを用いて一貫した一元管理を行い、自動化/最適化する施策のこと。
マーケティングオートメーションとは、「メール」「Webサイトの訪問者分析」「リードスコアリング」「リードナーチャリングキャンペーン」「キャンペーン管理」「レポート作成」などの機能を、1つのソフトウェアに統合することで、マーケティング業務を効率化し、営業とデータ共有を行うもの。
マーケティングオートメーションとは、企業のマーケティング活動において、「人手で行っていた定型的業務」や「人手では時間がかかってしまう複雑な処理」や「大量の作業」などを自動化し、効率を高める仕組み。
「リードスコアリング」とは、リードの中から、リードのアクション(Webサイト閲覧履歴/メール開封など)を元に、提案/商談段階に進む可能性が高いリードを抽出する機能。
「リードナーチャリング」とは、リードに対して、「サービスやプロダクトの興味を高めるコンテンツ」もしくは「優位性をアピールするコンテンツ」を送ることで、商談の見込み度合いを高める活動。
マーケティングオートメーションは、商談発掘プロセスのシステム化において中核的な役割を担い、「営業部門のために有効な商談を増やす」ためのシステムであり、マーケティング部門での「見込み商談作成」を効率化しつつ、営業部門に「有望商談」を渡すために利用できる。
マーケティングオートメーションは、米国で提唱された。米国では、すでに一般的となっている概念。
国土が広いという環境から、「非対面での営業」に関する関心が高くなり、「リード獲得」「インターネット会議」「チャットツール」などの技術が進歩してきた。
そのような技術が確立されてくると、「顧客それぞれの興味関心や行動に合わせたマーケティング」「ルール化できる部分の自動化」「人間は人間にしかできない仕事をすべき」などの発想が生まれ、マーケティングオートメーションという概念が注目を集めるようになった。
さらに、「Web技術の進歩」「クラウド技術の一般化」などにより、ビッグデータ集積や分析を容易に行える環境が後押ししている。
日本における法人向けビジネス(BtoBビジネス)は、対面営業が主流となっていたが、時代の変化に合わせて、マーケティングオートメーションの概念が広まってきている。
日本では2014年頃から話題に登り始めた。
BtoB分野においても、デジタルマーケティング手法を取り入れることで、「商談発掘プロセスのシステム化」や「コスト削減と売上アップの両方を目指す」などのケースが増えている。
近年、多くのマーケティングオートメーションツールが登場してきているが、米国に比べると、日本はまだ発展途上の段階といえる。
日本においても、営業手法の変革が迫られており、マーケティングオートメーションなしでの営業は難しくなりつつある。
理由(1) インターネットで情報収集
顧客はそれぞれ直接インターネットで情報収集を行うため、従来のように直接ベンダーを呼んで情報収集を行う必要性が減少している。
理由(2) トップダウン型からボトムアップ型へ
顧客企業での検討プロセスがトップダウン型からボトムアップ型へシフトしている。システムや環境も複雑化しており、トップダウンアプローチ時代のようにキーマンとの関係性を構築したとしても成約は難しくなってきている。
理由(3) 現場はネット世代
顧客企業の現場はネット世代(30代~40代)が中核を占める。対面営業よりも、ネットによる効率的な情報収集を好む場合が多い。
BtoB企業では、今までにおいても、商談情報管理は行っていたものの、見込み客リストの管理/分析については行われていなかった。名刺情報は保管されたままで利用されることはなく、組織として共有し活用するレベルに至っていなかった。
マーケティングオートメーションを導入すると、全社規模での見込み客データベースの一元管理が可能になり、資産の共有化を行える。
名刺管理ソフトを利用すれば、名刺情報のデータベース化は可能だが、マーケティングオートメーションでは、さらに、顧客情報(業種/役職/ニーズなど)の収集/分析/管理も行える。
マーケティング部門では、顧客別の「Web行動分析」「興味度合いの可視化」「購買意欲の可視化」「リスト優先順位付け」などの機能を利用することで、営業部門に対して、成約に至る可能性の高いリードリストを提示できる。その後、営業部門では、確度が高いリードに対するアプローチに注力できる。
マーケティングオートメーションツールを導入すると、これまで別々のツールで別々に実施していたマーケティングアクションを統合して、1つのツールで統合管理を行える。
別々のツールを利用している場合、それぞれのツール間のデータ連携は難しい面がある。「リードジェネレーション(新規顧客獲得)」と「リードナーチャリング(見込み顧客育成)」の連携不備により、有望なリードを失ってしまう場合もありうる。
マーケティングオートメーションツールの場合、1つのツールでの一元管理が可能であるため、リードに関するすべての情報を有効活用して、最適な施策を実施できる。
マーケティングオートメーションツールを利用すると、各リードに対する「アクションの最適化」を行える。
「この広告をクリックしてきたリードにはメール(パターンA)を送付」や「このリンクをクリックしてきたリードにはメール(パターンB)を送付」など、ひとりひとりの見込み客のニーズにマッチした課題解決策の提示が可能。
今までにおいては、各リードの詳細な行動分析を実施することは難易度が高い面があった。マーケティングオートメーションツールを利用することで、各リードに対して「最適なコンテンツを、最適なタイミングで、最適な方法で届けるOne to Oneマーケティング」を実施できる。
マーケティングオートメーションの大きな特徴として「作業の自動化(効率化)」がある。
興味や消費行動が異なるそれぞれのリードに対して適切なコミュニケーションをとるための作業を自動化できる。具体的にはマーケティングプロセスにおける「メール配信」「セミナー管理」「Webアクセス履歴管理」「リード管理」「スコアリング」などが対象となる。
作業シナリオ設計や設定などを行えば、毎日人手で行っていた「データ抽出」や「データ設定」などの同じような作業について、MAツールが自動的に実施する。人間が行う作業時間を短縮し、大幅な効率化が可能。
また、「入力ミスなどのヒューマンエラー削減」や「購買意欲が高いリードの見逃し防止」などの効果もあり、人間が実施する以上の正確なマーケティング業務も可能になる。
MAツールに定型的作業を任せることで、マーケティング担当者は、マーケティング戦略などの人間にしかできない領域に、より多くの時間を充てることができる。
マーケティングオートメーションの導入によるメリットとして、次のようなものが挙げられる。
・営業活動での成約率が大幅に向上
・新規営業案件数の増加
・顧客獲得数の増加
・メールマガジンに対するリアクションの改善
・ワークフロー自動化による業務ミス削減
・マーケティング関連コストの最適化
・市場規模の拡大
マーケティングオートメーションを運用する場合の一般的なフローは次のようになる。
(1)マーケティング戦略策定
(2)業務フロー設計
(3)コンテンツマーケティング企画
(4)コンテンツ制作
(5)配信シナリオ設定
(6)結果分析+PDCAサイクル実施
マーケティングオートメーションの導入にあたっては、「自社に最適なMAツール」を選定することが非常に重要とされている。
「自社に最適」という部分において、次のような多くの考慮すべきポイントがある。
・イニシャルコスト
・ランニングコスト(保守/アップデートコスト)
・運営体制
・自社のマーケティング戦略に適合するのか?
・自社が必要とする機能はすべて含まれているのか?
・どのプロダクトをPRするのか?
・どのような顧客をターゲットとするのか?
・どのようなマーケティング施策を検討しているのか? など
「自社の規模」「自社の体制」「自社の方針」「顧客戦略」などを充分に理解した上で、自社に最適なMAツールを選択する必要がある。
マーケティングオートメーションツールは単なるツールにすぎないため、「どのように運用していくのか?」がポイントになる。MAツールを導入しても、有効的に運用できなければ意味はなく、企業価値向上にはつながらない。
MAツールを有効活用するためには「運用組織体制の確立と変革」が必要になる。MAツールの特性に合わせて、ビジネスフロー(ビジネスプロセス)を適切にチューニングすることにより、マーケティングオートメーションの導入効果が向上する。
しかし、顧客戦略を実現するためのサポート機能としてMAツールを利用すべきであり、「MAツールに自社を適合させる」ことは好ましいことではない。「顧客戦略」と「MAツールに関わるビジネスプロセス」の最適なマッチングが、マーケティングオートメーション導入成功のポイントとなる。
マーケティングオートメーションツールには、非常に多くの機能が搭載されているが、多くの機能を使うほど効果が高まるということではない。
マーケティングオートメーションを導入して成功している多くのケースとしては、「自社の顧客戦略として使える機能についてシンプルに利用している」という傾向がある。
マーケティングオートメーションの導入にあたっては、Webマーケティングのノウハウを持つ人材が必要となる。
MAツールは、マーケティング業務全般についてソフトウェアを利用して実行していくものであるため、マーケティングに関する知識や経験の浅いスタッフだけで使いこなせるものではない。
MAツールに含まれる各種機能は、それぞれにおいて有効な機能だが万能ではない。たとえば、リードの購買意欲をスコア化する「リードスコアリング機能」は、データ分析結果から得られた予測として活用できるが、マーケティング経験からの調整などは必要になる。
また、メール配信などに関するノウハウも必要となる。「顧客が価値を感じるコンテンツを作成して信頼度を高める」「他社との差別化を効率的に行う」「問い合わせをしやすい工夫を盛り込む」など、マーケティングに関するさまざまなテクニックが必要とされる。
マーケティングオートメーションの運用には、十分な人的リソースが必要とされており、1〜2名のみの体制では、充分な効果を発揮できないとされている。
マーケティングオートメーション開始時に十分な人的リソースを確保できない場合には「少人数でも運用可能か?」というポイントが重要となる。
海外企業製のMAツールには「Webサイトを活用したオンラインでのリード獲得機能」が含まれていない場合がある。
その理由としては、「メールマーケティングのオートメーションとして発展してきた」「海外の法律による制限」「商習慣の違い」などがある。
マーケティングオートメーションのリード情報には、大量の顧客の個人情報が含まれているため、個人情報漏洩対策が非常に大きな課題になる。
「オンプレミスツールを利用」と「クラウドサービスを利用」でも、考慮すべきポイントは異なる。
「どの部分から情報漏洩が発生する可能性があるのか?」「どれだけの予算を投じて、どのレベルまで保護すべきなのか?」「MAツールのセキュリティ機能はどうなっているのか?」など、幅広い視点で対策を講じる必要がある。
マーケティングオートメーションツールとは、各種デジタルマーケティング機能が1つに統合されたソリューションであり、企業マーケティング活動の効果を高め、効率化を行うことを目的としたソフトウエア。
マーケティングオートメーションツールを使用することで、マーケティング業務や営業活動の多くのプロセスを自動化できる。
マーケティングオートメーションツールは、「BtoC(消費者)向けに特化しているツール」と「BtoB(法人)向けに特化しているツール」の大きく2つに分類できる。
「比較的安価に利用できるもの」や「あえて機能を絞ってシンプルに利用できるもの」など、さまざまな特徴を持つ多くのツールが存在している。
BtoC向けマーケティングオートメーションツールの傾向として、「扱えるリード(メールアドレス)数が多い」「ECサイトに対応」「特典ポイント施策を行いやすい」などがある。
BtoBマーケティングの場合は、成約までに多くの時間やプロセスが必要となる。また、プロセスに関わる人数も多くなる。そのため、BtoB向けMAツールには、BtoC向けよりも、詳細に情報を収集し、細かに分析を行えるツールが多い傾向がある。
マーケティングオートメーションは「統合型」と「特化型」に大別される。「統合型」はリードジェネレーションからリードナーチャリング、リード管理など広範囲の領域をカバーする。対して「特化型」は特定の機能や領域に強みのあるタイプで、状況がマッチすればマーケティング効果が最大化される。
どちらのタイプが最適なのかについては「トータルでマーケティングを強化したいのか?」「特定の領域に特化して強化したいのか?」という企業の課題によって異なる。
「リードジェネレーション」とは、「まだアプローチをしていない未開拓のユーザーから見込み顧客(リード)を獲得し増加させていくアクション」を意味する。
多くのリードを獲得することで、多くの見込み顧客に対してさまざまなプロモーションを行えるようになる。多くのリードを確保するほど有望なリードにたどり着く可能性も高まるため、リードジェネレーションは、最初の重要なアクションとなる。
従来手法としては、「展示会への出展」「セミナーの開催」「営業担当者の名刺交換」などがある。
MAツールが提供する「リードジェネレーション」関連機能として、次のようなものがある。
・オウンドメディア(ランディングページ)機能---Webサイト構築、ランディングページ作成、登録フォーム作成
・SEO分析機能---検索エンジン経由からのランディングを増加させる
・SNS対応機能---SNS管理運用、SEOを向上させる
「リードナーチャリング」とは、メール/ブログ/SNSなどで、リードに対して適切なコンテンツをPRすることで、リードの成約度合いを高めていくアクション。
MAツールが提供する「リードナーチャリング」関連機能として、次のようなものがある。
・メール配信機能---メール(テキスト/HTML)作成、配信
・キャンペーン管理機能---キャンペーンシナリオ作成、メール自動配信、ステップメール
「Webサイトを閲覧したリードに対して特定のメールを自動送信」などのプロモーションの自動化も行える。
「リードクオリフィケーション」とは、「リードの属性(企業規模/業界)」「リードの興味関心」「リードの購買意欲」などに応じてリードを分類し、成約確率が高いリードをリストアップすること。
MAツールが提供する「リードクオリフィケーション」関連機能として、次のようなものがある。
・セグメンテーション機能---閲覧履歴などに応じてリストを分割してメールを配信
・リードスコアリング機能---見込み客の属性やオンラインアクションから、その有望度に点数をつけて、案件化のために絞り込みを行う
マーケティングオートメーションにおいて、リード管理は根幹となる機能。リードデータベースを作成し、「リード情報の各種管理」や「属性情報や行動履歴の登録」などを行う。それぞれのリード情報として、各種情報を登録し、そして、更新し続けることが重要となる。
「企業規模」「業種」「ニーズ」「決裁権有無」などの名刺情報には含まれていない情報も登録する。行動履歴としては、オフラインの「セミナー(展示会)出席履歴」や、オンラインの「Webページ閲覧履歴」「メール開封履歴」などを登録する。
MAツールが提供する「リード管理」関連機能として、次のようなものがある。
・リード管理機能---データベース上で見込み客情報の保管/管理
・Webサイト行動解析---オンラインでの行動履歴解析
・CRM/SFA連携機能---マーケティング活動と営業活動を連携
・レポート機能---一連の業務成果を測定、レポーティング
その他の機能として、次のようなものがある。
・ホットリード検出機能
・セミナー管理機能
・将来予測機能
・個別カスタマイズコンテンツ機能 など
MAツールには、オンプレミスツール(自社サーバにインストールして自社内で利用)の他に、クラウドサービスも利用できる。
近年では、ソフトウェア保守の必要がない、クラウド型マーケティングオートメーションサービスの利用が増えている。
2016年09月09日(金)15:00~17:30 オージス総研 東京本社 会議室 にて『BtoBでマーケティング・オートメーションを成功させる、「カスタマージャーニーマップ」の活用とエンゲージメントマーケティング』が開催されました。当日は、熱心に受講されている方が多く、盛況のうちに終了することが出来ました。ありがとうございました! 当日の講演資料の一部を開催報告ページにて公開していますので、ご...
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