(参考)LPWAとは
■概要
■注目される背景
■IoT向けネットワークの要件
・コスト
・カバーエリア
・消費電力
■解説リンク
SIGFOXのサービス展開状況
■グローバル
・ヨーロッパ
・アメリカ
■日本国内
・KCCSがサービス提供
・サービスエリア構築
SIGFOXの特徴
■概要
■伝送距離
■周波数帯域/無線局免許
・サブギガ帯域
・上り通信方式
・送信電力
■耐干渉性/耐障害性
・耐干渉性機能「キャリアセンス」
・通信確実性確保機能「タイムダイバシティ」
・耐障害性:全基地局受信機能「スペースダイバシティ」
■データレート
・データレート
・上り通信データ
・下り通信データ
・SIGFOXに「向いているケース」「向いていないケース」
■低消費電力
■低コスト
SIGFOXクラウド
■データはクラウドに蓄積
■API
■グローバル
■利用料
「SIGFOX」(シグフォックス)とは、LPWA技術を利用したグローバルIoTネットワーク。「低価格」「低消費電力」「長距離伝送」を特長としている。
SIGFOXは、IoT(Internet of Things)向けに特化したLPWA(Low Power, Wide Area)通信規格を利用するグローバルIoTネットワーク。フランスのトゥールーズに拠点を置く通信事業者「SIGFOX社」が2009年から提供している。
SIGFOXは、何百万台のスマートデバイス接続にも対応できる無線ネットワークで、低消費電力と長距離伝送を実現するIoT向けネットワーク「LPWA規格」の中でも、「より安く」「より広域をカバーできる」技術として注目を集めている。
「LPWA」とは、「Low Power=省電力」+「Wide Area=広域エリア」を意味しており、少ない消費電力で、km単位の距離で広範囲に通信できる無線通信技術の総称。
LPWAが注目される背景として「IoTデバイスの急増傾向」がある。2020年には世界で530億個のIoTデバイスがネットワークに接続し、2023年にはセンサー数として1兆個に及ぶ見通しもある。
そのような背景があり、既存ネットワークとは別に、IoT用ネットワーク技術が各種考案され、一部が実用化/商用化され始めている。
LPWAは、膨大な量のIoTデバイスをネットワーク接続させ、データをインターネットに送り届けるための主力候補として注目されている。
IoT向けのネットワークには、既存ネットワーク規格とは異なる観点としての要件がある。
IoT向けネットワークの最大のポイントはコストとされている。
例えば、自販機/オフィス機器/家電品/水道メーターなど、さまざまなデバイスからのデータをインターネット越しに収集して利用するためには、さまざまなコストがかかる。
対象デバイスが多いほど、コスト問題は深刻化する。
・デバイスコスト---計測器(センサー)ごとに装備する無線ネットワークモジュール費用
・ゲートウェイ装置コスト---データを集約してインターネットに送り込むルーター装置費用
・設置コスト
・ネットワークそのもののコスト
・メンテナンスコスト
・電力コスト など
さまざまな場所に設置されるIoTデバイスと通信できるように広域な範囲をカバーできる必要がある。
電力が供給されていない場所に設置するIoTデバイスは電池などでバッテリーで動作させる。バッテリーを交換するためのコストを抑えるために、非常に低い電力消費が求められる。
→AnalyticsNews →LPWA(Low Power、Wide Area)とは
2017年時点のSIGFOXの利用状況として、ヨーロッパを中心に31カ国で利用されており、200種類を超えるデバイスが展開されている。引き続き、60カ国以上でのサービス展開を目指している。
・フランスとスペインのほぼ全土をカバー(人口カバー率85%のエリア構築)
・1000万以上のデバイスで利用されている
・10都市に利用エリアを拡大中
SIGFOX社は、同規格の世界展開において、1国の国内サービス事業者を1社とする戦略をとっており、日本では京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)が事業者となっている。
日本において、SIGFOXは、KCCSが基地局設置を進めており、KCCS社のパートナー企業を通じて提供される。
すでに東京23区/横浜市/川崎市/大阪市などでのサービス提供が開始されている。
政令指定都市を含む主要36都市に拡大していき、2020年3月末までに全国に展開する予定としている。
SIGFOXは「大量のデバイス接続が行われるセンサーネットワークに特化したネットワーク」であることが最大の特長となる。
ユーザー側でゲートウェイ装置を用意する必要はなく、すべてを事業者に任せられる。
SIGFOXは30キロメートル程度のエリアをカバーできる。他のLPWA方式よりも広いエリアをカバーできるため基地局数を少なくできる。
屋内でも通信ができるように基地局建設は進められているが、重厚なビルの中心部や地下では通信ができない場合がある。
また、自動車や電車のような速度で移動中の通信は行えない。自転車程度の速度であれば利用可能としている。
SIGFOXは「回折性が高い」「到達距離が長い」という特徴がある「920MHz帯域(サブギガ帯域)」を利用する。
SIGFOXネットワークの上り通信方式は、その中でも極めて限られた帯域幅(100Hz帯域)の無線通信(UNB:ウルトラナローバンド)を利用している。
100Hz幅という狭帯域通信にすることで、スペクトラム密度を上げられ、干渉/混信に強く、微弱な電波強度(マイナス142dBm)でも十分に有効な信号を受信できる特徴がある。
狭帯域で通信を行うことにより、干渉が発生しにくくなるメリットもある。
送信電力としては、無線局免許が必要ない20mW以下での運用を行う。
SIGFOXは、以下の機能や特徴を生かして、耐干渉性と耐障害性を高めることで、データ送受信の確実性を高めている。
SIGFOXデバイスから通信を行う際の干渉対策として、他デバイスが同じ帯域で通信を行っているかについて確認してから通信を行う「キャリアセンス」機能がある。
SIGFOX自身が他の通信への干渉にならないように、通信チャンネルの200kHzにわたって5ミリ秒間、他の通信がないことを確認する。
各SIGFOXデバイスは、1つのデータを送信するにあたり、周波数をその時々でランダムに換えて異なる周波数で3回連続で送信する「タイムダイバシティ(Time Diversity、Frequency Diversity)」を実行する。
この機能により、あるタイミングで基地局受信に失敗したとしても、複数回の送信でカバーでき、他の通信からの干渉に対して耐性を持たせている。
SIGFOXデバイスから送信されたデータは、すべての受信可能な基地局で受信できる。
SIGFOXデバイスと基地局の間に、通信に障害を与えるような干渉源となる装置があるような状況でも、他の基地局受信で補完できるメリットがある。
また、基地局1局が故障した場合においても、他の基地局でカバーできる。
SIGFOXのデータレートとしては以下のように非常に低速な通信を行う。
・上り通信(SIGFOXデバイス→基地局):100bps
・下り通信(基地局→SIGFOXデバイス):600bps
「NB-IoT=最大100kbps」「LoRaWAN=最大10kbps」などの他のLPWA方式よりも帯域幅を狭くしてデータレートを落とすことにより伝送距離を伸ばしている。
1回の通信で「12バイト」のデータを送信する。SIGFOX仕様上の制約により、1日の通信回数は「最大140回」までとされている。
1回あたり12バイトの容量の通信となると非常に小さく感じるが、GPS位置情報を送信する場合に必要なデータ量は8バイト程度であるため、さらに、温度情報や振動情報などの情報を送ることができるキャパシティを持つ。
ロースペックの通信規格に見えるが、このシンプルさが、IoTの課題(消費電力/コストなど)を解決するためのポイントになっている。
基地局から各SIGFOXデバイスへの通信は、3キャリア伝送で350msの間、複数の端末に向けての指示を送ることができる。
ただし、上り通信を待つ必要があるため、一度の送信から次の送信タイミングまでは、30秒間以上の間隔が空く。そのため、下り通信においても大きなデータを送ることはできない。
SIGFOXは「低速で少量のデータを送信するデバイス」に適している。特に「機器IDと特定の数バイトのデータを数時間~1日ペースで送信する」ような水道/電気メーター測定などの用途に向いている方式だといえる。
そのため、多くの情報量を数分単位で常時収集するようなケースには不適となる。
SIGFOXは、扱うデータが小さいため、無線チップ/通信モジュールは小型となり、消費電力も小さくできる。
SIGFOXは処理するデータ量が少ないことから、通信モジュール/基地局などのハードウェアをシンプルにでき、低コスト化が可能となっている。
KCCSでは従来の通信サービスの半額以下の料金体系で挑むとして、最安のケースで「1デバイスあたり年額100円を切る価格」としており、既存ネットワークと比較しても破格の低コストとなっている。
IoTサービスの本格普及にあたり、台風の目のような存在となる可能性がある。
SIGFOXデバイスから送信され、基地局で受信されたデータは「SIGFOXクラウド」に蓄積される。
システム開発者は、データ収集用のネットワーク設備の設計/開発を考慮することなく、「データの見える化」や「分析アプリケーション開発」に集中できる。
「ログ取得」「ログ保管」「デバイス管理」などの機能もクラウドサービスとして利用できるため、低コストでIoTサービスをスタートできる。
SIGFOXクラウドには、Webサーバ(クラウドサービス)との連携用に、データを取得するためのWeb APIが用意されている。
また、自動的にデータを転送するコールバック機能が用意されている。
SIGFOXクラウドはグローバルで利用できる。
そのため、地域的に限定されないシステムが比較的容易に構築できる。特に、グローバルで製品を販売している企業などでは、その製品稼働情報について国境を越えて収集できるメリットがある。
SIGFOXクラウドの利用料金は回線の利用料金に含まれている。
参考元サイト
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