LPWAとは
■概要
・読み方
■開発の経緯(IoT向きテクノロジー)
・「M2M」とは
・「IoT」とは
・LPWA開発経緯
■特徴
・主な特徴
・消費電力
・長距離通信
・シンプルネットワーク
・送信データ量
・通信速度
・通信コスト
■LPWA規格
・さまざまな規格が存在
■LPWAの想定ユースケース
・自然災害対策
・環境対策
・農業/畜産
・交通/物流/輸送管理の効率化
・インフラ維持/保守
・スマートシティ
・安全対策
「LPWA」とは、「Low Power=省電力」+「Wide Area=広域エリア」を意味しており、少ない消費電力で、km単位の距離で広範囲に通信できる無線通信技術の総称である。
デバイスのバッテリー消費を抑えながら、遠い地点にあるデータ収集基地局(ゲートウェイデバイス)まで電波を届けることができる。
LPWAを用いて構築したネットワークを「LPWAN(LPWA Network)」と呼ぶこともある。
「LPWA」は、そのまま「エルピーダブリューエー」と読む。
LPWAは、「M2M」や「IoT」向けに開発されたテクノロジーである。
「M2M」とは「Machine to Machine」の略であり、「人が介在することなく、モノ(機械)とモノ(機械)が通信手段(ネットワーク)を利用して情報をやり取りする仕組み」を意味する。
M2Mは、機械同士の情報のやりとり部分のみが対象範囲であり、「機械同士の相互の連携機能」はあるものの、その情報はシステム内に閉じている。「情報をインターネットやクラウドに送信する機能」は含まれていない。
M2Mの具体例
・水道/ガス/電気などの計測
・エレベータ/自動販売機の遠隔監視
・駐車場管理
・産業用資材/機器の管理
・車両追跡
・農業管理 など
「IoT(Internet of Things)」は、従来インターネットに接続されていなかったさまざまなモノ(センサー機器、車、電子機器など)について、ネットワークを通じてサーバやクラウドに接続することにより、これまで利用できなかった多種多様なデータを処理/変換/分析/連携できる仕組み。
「M2M」を拡張させたもので、インターネットやクラウドに送信する機能も含む。
LPWAが登場する以前のモバイル通信技術は、「Bluetooth」「無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)」「LTE(携帯電話通信規格)」などが採用されてきた。
IoT/M2Mが注目を集めて、サービスを展開する企業が増えるのに伴い、それを支えるネットワークインフラに「低消費電力」「通信速度は高速でなくてもよい」「広域通信できる」という条件が求められた。
しかし、既存ネットワークは、「高速化」と「大容量化」という方向で発展していたため、条件に適合しづらかった。
LPWAは、Wi-Fiのような消費電力の大きいネットワークとは対極となる、低消費電力が求められたことを背景として開発された。デバイス1台あたりのデータ量は小さく、電源がない場所で稼働することも想定されている。
IoTが本格化すると接続されるデバイス数も急増すると想定されており、その数は2020年には約200億に達すると推測されている。
使用にあたって、免許を必要としないISM帯も利用できることで、「インフラとしてのLPWA」としての普及しやすさも考慮されている。
LPWAは、「低消費電力」「長距離通信」「低コスト運用」「効率的通信処理」などの特長を備えている。
IoTでは、電力供給がない場所へ設置されるデバイスのために、少容量の電池/バッテリーによる長期間駆動が求められる。そのため、LPWAでは、効率的に通信処理を行い、いかに低消費電力に抑えた設計にするかが重要な要素になる。
Wi-Fiの消費電力と比較すると、LPWAは圧倒的に低消費電力になっている。電池のみで「数年単位」の動作を実現できる。
無線通信規格には「無線LAN(Wi-Fi)」「Bluetooth」「IrDA」「RFID」「LTE通信」など数多くの規格があるが、LPWAはそれらよりも広域範囲をカバーできる。
スマートフォン/タブレットとデバイスをワイヤレスで結ぶ「Bluetooth」の通信可能距離は数メートル程度で、携帯電話(LTE通信)でも通信可能距離は6km程度である。
一方、LPWA通信可能距離は、見通しのよい開けた環境で、最大10km程度とされていて、携帯電話のカバーエリアよりも広い。
遮蔽物がある場合や、木が生い茂る森の中の場合では、安定した通信をできる距離は短くなる。
IoT/M2Mの場合、エッジ側のデバイスから計測データを一方的に送信できればよい場合が多く、シンプルで低コストなネットワークが求められる。
LPWAでの通信は、無数のデバイスから送られた通信について、ゲートウェイデバイス(中継ノード:ネットワーク同士を接続するためのハードウエア/ソフトウエア)を介して外部ネットワークとつながる。ゲートウェイデバイス以外のルータなどを仲介させる必要はない。
たとえば、20軒の農作物用ビニールハウスの温度を管理する場合、温度計測データは20個あるデバイスからLPWA通信でゲートウェイデバイスに送信され、ゲートウェイデバイスから、インターネット経由でクラウドなどに送信される。
LPWAを用いた無線センサーネットワークは、「センサーデバイス群」と「データを蓄積するサーバ群」とを結ぶ役割を果たす。
IoTデバイスから送信されるデータの多くは、静止画でも音声でも動画でもなく、システムが状況を認識するために必要な情報(半角英数の文字コード)であり、データ量としては小さなもので、数十から数百バイト程度にすぎない。
また、常時通信し続ける必要はなく、1日に数回程度で十分な場合も多い。
扱うデータが小さく、通信頻度も少ないため、送信にかかる電力を少なくでき、省エネ性能向上につながる。
LPWA通信の特徴として、大量のデバイスとの通信が発生するが、扱うデータ量はごく少ないため、高速通信については重要視されない。LPWAの通信速度の遅さは必ずしもデメリットにならない。
「Bluetoothの通信速度は最大24Mbps」「Wi-Fi(IEEE802.11a/11g)の通信速度は最大54Mbps」「LTEの通信速度は数百Mbps程度」などの高速通信規格に対して、「LPWAの通信速度は100bps〜400kbps程度」である。
LPWAでは、扱うデータ量が非常に少ないため、格安コストで利用できる。
日本では「月額100円」のような低価格で利用できるサービスが登場している。
LPWAの規格は、世界中の多くの団体/企業からさまざまな規格が提案/提唱されており、乱立している状況にある。それぞれで実用化が始まっている。
LPWAは大きく分けて、免許が必要な「セルラー系LPWA」と、免許が不要な「非セルラー系LPWA」に分けられる。
免許必要「セルラー系LPWA」は、LTEや5Gの標準化を推進する3GPP(Third Generation Partnership Project)が取り組む認可周波数帯でのLPWA規格である。携帯電話キャリアが認可を受けたその周波数帯域で携帯通信の技術でLPWAネットワークを構築する。
免許不要「非セルラー系LPWA」は、IEEEおよび各アライアンスがISM(Industry Science Medical:産業/科学/医療分野で汎用的に使うために割り当てられた周波数)バンドを利用するLPWA規格である。免許が不要なISMバンドを用いてLPWAネットワークを構築する。
LPWAの主な規格
・SIGFOX
・LoRaWAN(LoRa)
・NB-IoT
・GreenOFDM
・DASH7
・RPMA
・Wi-SUN
・LTE-MTC
・NB-Fi Protocol など
IoTは、2022年に世界で200兆円クラスの大市場に成長すると予測されている。
一方、LPWAはIoT普及の起爆剤になり、2018年以降、年率20%以上のペースで市場が成長すると見られている。
IoT+LPWAにより、「公共サービス」「産業活動」「個人の生活」など、非常に幅広い多くの応用例が想定されている。
・河川水位監視(氾濫、崖の崩落、ダム決壊の予見)
・火山の監視
・雪崩の監視
・環境汚染モニタリング(大気中/森林/土壌/海洋/河川/湖沼など)
・水田/畑/ビニールハウスにおける温度/湿度/肥料の状態などを測定
・灌漑作業/給水管理の自動化
・農業作物の栽培/品質管理(生育に最適な環境を整える)
・農業作物の品質と収量の向上
・牧場の家畜見守り/放牧管理
・鳥獣被害の検知/防止
・タクシー/バスの監視(きめ細かい配車、運行)
・トラックの監視/追跡/物流管理(配送効率化)
・コネクテッドカー
・交通状況の監視/制御
・ホテル/レストランにおけるタクシー呼び出し
・橋梁/トンネルなどの劣化状況把握と適切な維持管理
・マンホールの水位測定/ガス漏れ検知(遠隔監視/保守)
・工事/建築現場における異常監視/作業管理
・石油/天然ガスのパイプライン監視
・スマートシティ/スマートコミュニティの構築
・スマートライティング(街灯の点灯/消灯の遠隔制御)
・ホームセキュリティ
・ホームオートメーション(家電の遠隔制御)
・スマートメーター(電力/水/ガスの使用量を計測)
・スマートパーキング(自動車/自転車の駐車管理)
・ヘルスケア(ウェアラブル機器からの各種情報収集)
・ゴミ収集効率化
・ショッピングモール/イベント会場/テーマパーク/観光スポットなどにおける安否確認/避難誘導
・登山/スキーでの遭難者の検知/救助
・工場/プラントにおける故障/異常監視/設備監視
・エレベータ/エスカレータの遠隔監視
・防犯カメラ制御
・AEDバッテリー残量チェック
・児童/高齢者の見守り
参考元サイト
米国における無線通信業界を代表する業界団体「CTIA」が、セルラー接続IoTデバイス用「CTIAサイバーセキュリティ証明プログラム」を発表した。 「CTIAサイバーセキュリティ認証プログラム」とは CTIAサイバーセキュリティ認証プログラムは、「NTIA(国家電気通信情報管理局)」および「NIST(国立標準技術...
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