CLOSE UP コラム | 急速に普及する、人工知能による株取引。

急速に普及する、人工知能による株取引。

CLOSEUP コラム

2017年07月24日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

金融業界での人工知能の活用、とりわけ株投資での人工知能活用が拡大している。

金融各社とも人工知能を活用した商品を次々と投入しており、今後も、株投資における人工知能の存在感は一段と高まりそうだ。国内とアメリカの動向を紹介する。

国内では、人工知能が運用する株式投資も。

2016年12月、三菱UFJ国際投信は、機関投資家向けに人工知能が銘柄を選択する投資信託の運用を始めた。この投信は三菱UFJ信託銀行が実験してきた人工知能モデルを利用したものだ。

機械受注や有効求人倍率といった経済指標、移動平均や売買高など、市場に影響を与えるデータを分析し翌日のTOPIX(東証株価指数)の騰落を予測。上昇しそうな場合は株式に資金を当てる。また、ニュースや有価証券報告書、ネットの書き込みをはじめとしたビッグデータから特定の銘柄のポジティブ度とネガティブ度を点数化し、ポジティブ度の点数が高い銘柄の購入を進める。

人工知能は個人投資家向けにも活用されている。代表的なサービスが、人工知能が資産運用のポートフォリオを策定するロボアドバイザーだ。楽天証券は16年7月、投資一任型運用サービス「楽ラップ」を発売した。

マネックス証券の「MSVLIFE」は「世界一周旅行」や「マイホーム」など資産計画の目標をまず設定する。そのうえで目標金額や期間、スク許容度などを入力すれば、自動で資産運用計画が策定される。最低投資予算は1万円と、業界最低水準だ。

またヤフーは2016年11月、グループの投資信託委託会社、人工知能を開発する投資顧問会社とともに、人工知能が運用する投信の販売を開始した。ヤフーの天気予報やニュース、検索ワードなどのデータが分析に用いられている。

各社に共通するのは、コストの低さだ。信託報酬や手数料を低く抑え、最低投資金額も低い。参入障壁を低く設定し、多くの個人投資家を呼び込む構えだ。

アメリカでは、人工知能による株式投資資産額が2020年には220兆円に。

一方、米国ではAIによる投資が急速に広がる可能性がある。大手コンサル会社の米A.T.カーニーによる調査では、ロボアドバイザーが運用する資産額は20年には220兆円に達するとされている。

このような背景を受けて、コンピューター科学者でアップルの音声アシスタントSiriの基盤づくりにも寄与したババク・ホジャット氏は、「株取引で人間は感情的であり過ぎる」という確信をもち、100%人工知能に任せる新興ヘッジファンドを始めた。

ホジャット氏はセンティエント・テクノロジーズの共同創業者だ。新興ヘッジファンドの同社は過去10年近くを、膨大なデータを調査してトレンドを見つけ出し、株取引で学び適応しリターンを挙げられる人工知能システムの秘密トレーニングに主に費やした。テクノロジー業界のベテランで構成する同社のチームは、人工知能活用によって株式投資の中枢ウォール街のプロに対して優位に立てると見込んでいる。

センティエントのサンフランシスコにあるオフィスの壁には、「ターミネーター」のように人工知能が人間のように振る舞う世界を描く映画のポスターがところどころ貼られている。窓のない小さなトレーディングルームの中で唯一光を放っているのはコンピュータースクリーン、そして大画面テレビに映るバーチャルな火だ。人工知能システムをシャットダウンしなければならない万が一の場合に備え、男性2人が取引を静かに見守っている。

センティエントは、パフォーマンスや技術の詳細の多くについて明らかにしない。伝統的なヘッジファンドが先端技術に資金を投じ、アイデアを生むのに人工知能を利用するところも少なくないが、トレーディング全体を任せるセンティエントの手法は異例と言える。

センティエントは今のところ自己資金のみ取引しているが、その動向は金融界や人工知能業界が注視している。同社には香港の富豪、李嘉誠氏が所有するベンチャーキャピタルやインド最大の財閥、タタ・グループなどが1億4300万ドル(約160億円)出資しているからだ。

同社のチームはアマゾン・ドット・コムやアップル、グーグル、マイクロソフトなどテクノロジー企業のベテランで構成。コンピューターが自ら理解を深めていく機械学習やデータサイエンスの金融市場への応用を目指す、シリコンバレーのグループの一角と言える。同社は内部ベンチマークを上回る成績を人工知能システムが上げているとするが、ベンチマークの詳細は明らかにしない。2017年内には外部から株式投資などの資金を募る計画だという。

以上、下記URLからの要約
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-07/OKZDL76TTDSS01
http://toyokeizai.net/articles/-/152711


著者プロフィール

オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス 「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。

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