2016年01月19日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
最近では、IoTという言葉が広く使われるようになってきましたが、似たような考え方として、M2Mという言葉があります。この記事では、IoTとM2Mの違いについて考えてみます。
まず、最初に、M2Mから説明をします。IoTという言葉が生まれる前から、M2Mという言葉は存在していました。つまり、M2MはIoTの先輩であり、ベースとなる考え方ということになります。
M2Mとは、「Machine to Machine」の略表記で、「機械と機械をつなげる」というような意味になります。
M2Mの分かりやすい例として、工場について考えてみます。工場の中には、様々な工作機械が存在していて、それぞれの役割を果たしています。IT技術が発達するまでは、それぞれの工作機械は、それぞれスタンドアローンで動いていました。つまり、各工作機械の状況を確かめるためには、人が、その機械の前まで行って、状態を確認する必要がありました。その後、IT技術が発展したことによって、「機械同士で情報伝達できるようにして、1つのコンピュータで、工場内のすべての工作機械の状況を把握して、コントロールできるようにすれば、便利に違いない!」という発想が生まれてきました。この考え方が、M2Mです。
IoTとは、「Internet of Things」の略表記で、「モノのインターネット化」、「モノたちをインターネットに接続させていく」というような意味になります。
IoTは、上記のM2Mの考え方を、より発展させた形態です。
IoTの例としては、住宅を考えてみます。例えば、玄関の鍵についてです。今まで、玄関の鍵は、あくまで、ドアに内蔵されているもので、ドアの鍵をかけるor開けるという機能を実現するためだけに存在する物質でした。しかし、近未来では、その物質(モノ)であるドアの鍵が、インターネットに接続されていきます。ドアの鍵がインターネットの一部になることによって、外出先から自宅の玄関の鍵がかかっているかどうか確認することができるようになるわけです。「あれ?玄関の鍵をかけてきたっけ?」という不安を抱きながら、1日を過ごす必要がなくなるわけです。もし、鍵が開いていたなら、外出先から鍵をかけることもできます。
この例のように、「インターネットにつながっていなかったものをつなげていって、便利にしていく、新たなる価値を生み出していく」というのが、IoTの基本的な考え方となります。
以上の説明で、M2Mが先輩で、IoTは、さらに出来の良い後輩ということは、理解していただけたと思います。では、この同じような意味を持つ先輩後輩の違いは何でしょうか?
M2Mの例となった工場の工作機械は、「工場内部の工作機械たちを管理する」という目的があって、工場内のクローズなものでした。M2Mは、どちらかといえば、クローズ寄りの性質と言えます。
一方、IoTは、「どこからでも自宅の状況を把握して管理したい」のように、オープン寄りの性質があります。
もうひとつ大きな違いとしては、数の違いがあります。M2Mでは、せいぜい、工場内の工作機械数だけつながる程度でしたが、IoTでは、私達の周りにある、すべてのモノがネットにつながり始めます。家の中の、すべての窓、すべての蛇口、LEDライト1つ1つまでもが、つながってしまうかもしれません。今後、インターネットにつながりはじめるモノの数は、尋常ではないほど膨大なものになっていくと思われます。
私達は、幸運なことに、IoTが急激に進行していく様を見ていくことになります。セキュリティ関連などの、いろいろな問題が出てくるかもしれません。しかし、せっかくの大チャンスです。この価値観が変わるかもしれないほどの、ワクワクでドキドキな素敵なイベントを、おおいに楽しんでいきたいものです。
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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