2015年09月21日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
ビッグデータのなかでも、医療機器のセンサーデータを分析することでメンテナンス費用の大幅削減に成功した、大手医療機器メーカーA社様のケーススタディをご紹介します。
まずはA社様の課題からご紹介しましょう。
脳計測装置のような大型医療機器を製造・輸出を行っているA社様では、機器にとりつけられているセンサーで稼働状況を把握しています。
医療機器には数百から数千のセンサーが取り付けられており、それらのセンサーがデータに変換されて1時間に1回のペースで本部のサーバへ送信されます。本部では、サーバに蓄積したログを取得することで稼働状況を確認しています。
精密な医療機器には、定期的なメンテナンスが必要です。それまではメンテナンス担当者が波形をみながら、自身の経験にもとづいて交換時期を把握し、パーツを交換していました。
この従来のやり方では、非常にコストがかかります。パーツのなかには単価100万円という高額なものも少なくなく、属人的予測に基いてメンテナンス担当者が訪問して調査をするという費用も含めると、メンテナンス費用は膨大なものに膨れ上がっていました。
―医療機器のメンテナンスが必要な時期が知りたい。
―交換が必要なパーツを予測したい。
―それによって、不必要な訪問やパーツ交換を省いてコストを削減したい。
というのが、A社様のリクエストでした。
商用製品でこの問題を解決するには高額な費用が必要となり、社内的には結果が期待できるかどうかもわからない状態で予算もつけられないという事情がありました。
この背景をもとに、KSKアナリティクスでは、オープンソースでこの課題に対するソリューションを構築しました。
活用したオープンソースは、次の3種類です。
―Pentaho
(ペンタホ:ビジネスインテリジェンス(BI)ツール)
―RapidMiner、
(ラピッドマイナー:データマイニングツール)
―Revolution Analytics
(レボリューション・アナリティクス:ビッグデータ分析プラットフォーム)
オープンソースを積極活用することで、商用製品と比べて大幅なコストダウンに成功しました。
それでは、実際のソリューションについてご紹介します。
KSKアナリティクスでは、過去2年分のセンサーデータを分析し、数百のパラメータから故障に強い影響を与える数種類を特定しました。さらに、故障が発生する因子を抽出してモデリングを実施しました。
その結果、特定したセンサーの波形が、ある一定のかたちで動くと故障が発生する可能性が高いという予測にもとづき故障予測レポートを作成しました。
故障予測レポートは「何パーセントの確率で故障します」というアナウンスではなく、故障の可能性が高まる波形をグラフ表示しエビデンスを示しています。
このレポートを、1週間に一度、メンテナンス担当者にメール配信し、かれらの意思決定を支援するサービスを実施しました。
このレポートにより、メンテナンス担当者は事前に故障を予測する指標ができるようになり、かれらがメンテナンスの時期、パーツの交換時期を判断する基準にデータ的裏付けができるようになりました。
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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