CLOSE UP コラム | 人工知能で医療はどう変わるのか?

人工知能で医療はどう変わるのか?

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2017年01月30日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

これまで医師の経験と技術でしか成し得なかった医療診断という領域に、人工知能が大きく関わりはじめている。

2016年夏に東京大学医科学研究所で、人工知能の助言を受けて急性骨髄性白血病の患者の診断と治療方針を変更した結果、大きな治療効果が得られた事例が報告された。また自治医科大学では、患者の症状から鑑別診断を提示し、診療を支援するシステム「ホワイト・ジャック」の開発が進んでいるのだ。

東京大学医学研究所では「ワトソン」の助言で治療方針を変更。

東京大学医学研究所ヒトゲノム解析センターでは、2015年7月に米IBMが開発した人工知能「Watson(ワトソン)」を導入し、血液腫瘍領域を中心とした2000万件以上の研究論文や1500万件を超える薬剤の特許情報を学習させ、患者の症状やゲノム情報から原因疾患と治療法を推論させるシステムを開発している。この医療システムに患者の情報を入力すれば、10分ほどで根拠となる過去のデータとともに推論結果を示すと言われる。

この医療プロジェクトは、早くも成果を上げ始めている。2種類の抗癌剤を用いて化学療法を半年続けていたが効果が得られず病状が悪化していた「急性骨髄性白血病」の患者の診療データから、人工知能「ワトソン」が臨床医とは異なる診断結果を提示。それを受けて医師が治療方針を変更したところ、劇的な治療効果が得られた。現在、この患者は、外来での治療に切り替えるほどに回復しているという。

この研究では、データの蓄積を増やして診断の精度を上げるため、同研究所附属病院に血液疾患疑いで紹介された患者のゲノム情報を収集し、症状とともに「ワトソン」に解析させて鑑別診断と治療に結びつける取り組みを続けている。先の事例のように「ワトソン」による助言を受けて医師が治療方針を変更した医療事例は、他にも複数あるという。

この東大医科研の研究で活用されたのが、人工知能のディープラーニング技術である。遺伝子配列と血液腫瘍に関する多数のデータ、治療薬に関する情報などを人工知能の「ワトソン」に学ばせて関連付けと重み付けの処理を重ねている。そうして学習を重ねた「ワトソン」に血液疾患の患者の症状と遺伝子配列を提示すると、鑑別疾患を推論する。加えて、その疾患に効果があると推測される薬剤も示すという仕組みだ。

自治医科大学では「ホワイト・ジャック」で医師の診断を効率化。

東大医科研のみならず、ディープラーニングを活用した医療サービスの開発には、多くの研究機関・企業が参画している。なかでも、日常診療で臨床医がすぐにでも活用できるシステムとして期待を集めているのが、自治医科大学が複数の企業と共同で取り組んでいる総合診療支援システムの「ホワイト・ジャック」である。

人工知能医療システム「ホワイト・ジャック」は、患者の症状から複数の鑑別疾患を挙げ、各疾患である確率も算出しようというもの。希少疾患の鑑別を目的としているのではなく、臨床医が日常診療で使える医療システムの開発を目指している。

人工知能に学習させるのは、自治医大に蓄積された8000万件の診療情報やレセプトデータのほか、患者の居住地や気象情報、鑑別の感度・特異度に関する情報が含まれた論文や教科書情報など。そこに新たに来院した患者の予診、問診、検査に関するデータを入力すると、鑑別疾患のリストとそれぞれの確率を提示する。

人工知能医療システム「ホワイト・ジャック」に繰り返し臨床推論をさせると、鑑別疾患として挙がる疾患と、その確率が変動する。最終診断の責任は医師が負うが、その最終診断を下すための情報として、症状から考えられる重篤な疾患や見落としてはならない疾患の拾い上げができるようになるというのだ。

現在、自治医科大学が想定する利用者は、他科の医師に相談できないような僻地で診療をしている医師や、開業医、救急外来の当直医など。高齢化によって、複数疾患を抱えた患者がさらに増えることが予想される。総合医療のニーズは一層高まるが、総合的な医療トレーニングを受けている医師は少ないという現状がある。このように総合医療を手助けする仕組みとして、人工知能医療システム「ホワイト・ジャック」の活用が期待されている。

下記サイトからの要約。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/327441/101400132/?ST=health


著者プロフィール

オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス 「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。

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