2016年10月17日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
人工知能は、万能か。巷間ささかれているように、シンギュラリティの到来で、人間が人工知能のしもべとなる日がくるのだろうか。人工知能の発達と人間の知性を対比しながら、人工知能の課題と限界を考察する。
人工知能研究は、実に第二次大戦中から行われてきた。
20世紀最大の発明だといわれるコンピューターは、他の機械と異なり、人間の脳のように様々な処理を行なえる点に眼目があった。
史上初のコンピューターは、1946年に完成したENIACである。真空管を使った非常に大型な初号機だった。1960年前後のコンピューター発達期にはコンピューターが人間の頭脳をシミュレート出来るのではないかと思わせ、定理証明、チェスなどのゲームをコンピューターに行なわせ、それなりの成果をあげていた。
しかし、この初期のころから人工知能の限界がみえていた。定理証明においては、単純に演繹規則の適用による探索を行なうと、調べるべき場合の数が指数関数的に増えてしまい、組合わせ的爆発と呼ばれる現象を起こしてしまうという課題があったのである。
当初、コンピューターの課題は評価関数の発達や処理速度・メモリー容量の増大で解決できるものとして楽観的に考えられていた。しかし、人工知能には、もっと本質的な課題があった。
近年、IBMのスーパーコンピューターがチェスの世界チャンピオンを破ったことで「人間の知能を超えた」などと喧伝されたが、これは初期のころから予想されていたことで、評価関数の発達、コンピューターの計算能力・メモリーの容量が飛躍的に向上した結果に過ぎない。
たとえば、チェスのようなゲームでは、人工知能は、このようなアプローチを行う。一手あたり平均35通りの次の手の可能性があり、一つの対戦は40手ぐらいであるから、35の40乗、すなわち10の62乗となり、一局面の評価に1000分の1秒かかるため、全数探索には10の54乗年ほど費やすことになるという計算の上で、しらみつぶしの探索を行うのだ。
対して人間は、まず全体を把握してから詳細を認識するという心理学のゲシュタルトの立場に近いメカニズムをとっており、過去の経験から現在の盤面の何手か先にある陣形をイメージすることができる。これはコンピューターの処理とは正反対のアプローチである。
人間の場合は多くの経験を持ち、類似性の認識を行なえるから、無意味そうな探索はすぐに打ち切ることが出来るし、有力な中間結果にたどり着ければ、それを優先して探索できる。こうした効率的な処理は人間特有のものである。
人間が行なっているこのような種々のノウハウはヒューリスティックス(Heuristics)と呼ばれる。コンピューターは大雑把にいえば力まかせに探索しているだけである。
人間のように、互いに関係する知識をそれ以外の膨大で無関係な知識から探し出すと言う作業が、人工知能にはできない。これが人工知能の限界であり、フレーム問題と言われる。
また、コンピューターが、すべての知識を明示的に記憶し処理することしかできないのに対して、人間の知能は、記号化されていない「なまもの」である現実世界を、記号化し、論理的規則を導き出す能力がある。記号の世界をパターンの世界へしっかり立脚させることを記号着地(Symbol Grounding)という。この記号着地のメカニズムは解明されておらず、非常に困難な問題とされている。
そんななか、人工知能に光明を見出したのが、ニューロン研究である。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~ninten-zatsugaku/AI.htm
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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