2016年12月14日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
ロボットがSFの世界の絵空事ではなく、身近に存在する現代、改めて1950年代に定義されたロボット工学三原則に注目が集まっている。
そもそも「ロボット」とは、1920年代のチェコの劇作家カレル・チャペックによる造語である。チャペックの戯曲「ロボット(R.U.R.)」に登場した「ロボタ(robota)」が語源だといわれている。ただし本作における「ロボット」とは、「奴隷」に近いニュアンスを含んでいた。その後、1950年代にアメリカのSF作家アイザック・アシモフが小説のなかで提唱したのが、ロボット工学三原則である。
SF小説「私はロボット」に登場する「2058年のロボット工学ハンドブック」で定義されている、意志をもつロボットと人間が共存していくためのロボット工学三原則とは、次のようなものである。
アシモフは、「ロボットシリーズ」という一連のSF小説を発表している。ロボット工学三原則は、シリーズを貫く重要な主題として扱われている。
アシモフの作品世界では、ロボット工学三原則に従わないロボットは「存在してはならない」ことが大前提である。その前提が何らかの事情で「弱められた」ロボットが作られたとき、ロボットとしては考えられない行動を取る。これが、アシモフの小説的な仕掛けとなる。
このロボット工学三原則を現実の世界に即してとらえると、ユニークなことが起こる。実際にロボット工学三原則にのっとったロボットを開発しようとすると、「フレーム問題」を引き起こすと言われているのだ。
ここで言う「フレーム」とは、必要なことだけを「枠」=「フレーム」で囲み、その範囲内で判断するという能力を指す。人間は、無数の要素から「今、この瞬間の行動に関係のある事柄」だけを選び、そのほかの要素を意図的に無視することができるが、この能力をAIやロボットに適用しようとすると非常にハードルが高い。人間には当たり前のように備わっているこのフレーム機能がAIやロボットには難しいという「フレーム問題」は、これまでもたびたび人工知能の領域において指摘されている。
有限の処理能力しか持たないAIやロボットは、現実世界の無限の選択肢を人間のように「うまくさばく」ことができず、仮にロボット工学三原則を守るためにあらゆる可能性を検討しようとすると、実在するコンピュータでは計算能力が追いつかず、コンピュータでいう「フリーズ」状況に陥ってしまうと言われているのだ。
アシモフの小説にも、ロボット工学の三原則に矛盾する困難な問いを投げかけられた結果、コイルが焼き切れて壊れてしまうロボットの話が登場する。
これまではロボット工学三原則に沿ったロボット開発は困難なことだと考えられてきたが、昨今話題のディープラーニングの登場により、状況が変わりつつある。AIに自ら「概念」を獲得させる素地が整ったことにより、今後、フレーム問題を解決できる可能性があるという意見も出てきている。
コンピュータの性能向上、AI技術の進歩、データ分析技術の向上、そしてあらゆるモノがインターネットに繋がるIoT技術の登場で、ロボットは今後、これまで考えられてきた限界を大きく超えた進化を遂げるのかもしれない。
下記サイトからの要約。
http://robot-fun.com/column/basic_knowledge/875
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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「ボット(BOT)」とは、人間がコンピュータを操作して行う処理について、人間に代わって特定の命令に従って自動的に実行するアプリケーションプログラムを意味する。主にインターネットにおいて単純な繰り返しタスクを自動で実行するプログラムを指し、ボットによるタスク実行速度は人間が手動で行う場合に比べて遥かに高速に実行される。
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