2015年12月07日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
会員データの分析によって顧客の離反の軽減に成功した、大手プロバイダーサービスC社様のケーススタディをご紹介します。
C社様は、「プロバイダーサービスの解約率を軽減」し、「中長期的視野にたったマーケティング施策を行う」というゴールを明確にして、KSKアナリティクスにビッグデータ分析を依頼しました。
C社様マーケティング部門では、「どういう人が、どういう動機で解約するのか?」、「何が、解約率にインパクトを与えているのか?」という要因分析を、中長期的マーケティング施策の論拠にしたいと考えていたのです。
この依頼に対して、KSKアナリティクスではデータのマート化が再優先であるととらえ、次のような流れでデータマートを構築しました。
ヒヤリング→分析要件の決定→必要データの収集→→ETLツール(Extract Transform Load tool:データを抽出、加工、書き出すツール)によるデータ集計→データマート構築
中長期的の視野にたったマーケティング施策には、データのビジュアル化やクラスター分析が有効です。
データマートには、会員の属性データ、使用履歴、アンケートデータなどを取り込んでデータをチャート化し、顕著な傾向が可視化できるような工夫を凝らしました。
また購買額、継続率などから特定の顧客をセグメントして可視化し、「何が解約率に影響を与えるか?」という課題に呼応するモデルを作りました。
使用ツールとしてはPentaho(ペンタホ)でビジュアル化、RapidMiner (ラピッドマイナー)でクラスター分析、解約率の要因を特定するためには決定木分析という手法を採用しました。
解約率の要因を特定するための決定木モデル分析とは、樹木状のモデルを使って要因を分析し、その分析結果から予測を行う手法です。さまざまなビジネスシーンで活用できる、代表的なデータマイニング手法のひとつです。
顧客ID、会員属性などのデータを見ただけでは、解約の要因は特定できませんが、決定木モデルを採用すると、年齢や年収ごとに購入頻度が可視化できます。決定木分析は、ユーザ目線でわかりやすいのが最大の特徴です。
一方、決定木分析で離反要因を特定する場合、どのデータが適用するかについてはトライアンドエラーで探っていくありません。会員属性、使用履歴、ポイント履歴、アンケートなどの各種データをさまざまな角度で構築しながら、離反要因を探ります。ここは地道な作業でもあり、データ分析者の腕のみせどころとなります。
決定木モデル分析によって離反原因の仮説が見えたことにより、C社様内部でそれに基づいたルールが構築され、最終的には未然に顧客の離反を防ぐ施策につながりました。
この分析によって、たとえば「会員ポイントをまとめて消費した顧客は、2ヶ月以内に退会する可能性が高い」といった傾向が認められた場合には、「会員ポイントをまとめて使用した顧客に対して迅速にクーポンを送る」といった対応を行うことが可能となったのです。
肝心なのは離反要因そのものではなく、業務を行う上で担当者がぼんやり実感していたことが、データをもとに論拠として明示化されたというところにあります。この論拠によって、データに基づく精度の高いマーケティング施策の立案が可能になりました。
【ケーススタディまとめ】
ーヒアリングにより分析要件を決定して、必要なデータを収集、クレンジングし、ETLツールでデータマートを構築。
―データをチャートおよびテーブルでビジュアル化、顕著な傾向を把握できる。クラスター分析にて、顧客のセグメントを明確化。
―さらなるクレンジングを繰返し、決定木モデルよりルールを可視化した。
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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