CLOSE UP コラム | 人工知能「ワトソン」の銀行など金融業界への導入事例

人工知能「ワトソン」の銀行など金融業界への導入事例

CLOSE UP 事例

2017年02月27日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

金融業界において、人工知能の導入がより広がっている。米IBMが開発した人工知能「ワトソン」を導入して顧客満足度を上げる保険会社、業務効率化を目指す銀行などの各社の導入事例を紹介する。

地銀では、「ワトソン」導入で業務効率化。

2016年10月、千葉銀行、第四銀行、中国銀行、伊予銀行、東邦銀行、北洋銀行の地方銀行6行は、IBMの人工知能「ワトソン」を導入し、業務効率化を目指す。投資額は6行で数千万円程度とのこと。業務効率化は、外国為替業務から始め、将来的にはコールセンターや融資の判断に対象を広げる方針だ。

この導入事例では、今後の人口減により行員となりうる若年層も減り、現在の業務レベルが保てないかもしれないという懸念があり、人工知能を活用した業務スキルの継承も一つの目的と言われている。

三井住友海上では、「ワトソン」導入で顧客満足度アップ。

2015年4月には、MS&ADインシュアランスグループが、IBMの人工知能「ワトソン」を本格導入した。コールセンターにおいて顧客の相談や苦情をきめ細かく分析し、効果的な営業活動につなげる。MS&AD傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険も、グループ内で共有し戦略的に活用している。

人工知能導入前は電話を受けたスタッフが入力した文章の分析が中心だったが、「ワトソン」導入後は音声分析も行い、電話でのやり取りを詳細に分析し、契約者の困りごとの把握やスムーズな対応につなげている。さらに交通事故の受け付けセンターなどへの横展開も進め、AIにより多くのデータを集積できるようになった。

「ワトソン」を導入して1年後、同グループは、世界の金融、なかでも保険会社を対象にリテール分野の革新的な取り組みを表彰する「Innovation in Insurance Awards 2016」において、顧客経験価値部門で最優秀賞を受賞した。この導入事例の受賞理由として、グループ企業の三井住友海上がコンタクトセンターに寄せられる顧客の声や問合せ内容を人工知能で分析し、入電予測に基づくオペレーター配置や顧客への回答支援等行うことにより、顧客サービスの向上に繋げている点を評価されている。

みずほ銀行では、「ワトソン」導入でオペレーター支援。

大手金融メガバンクでもサービスの差別化に向け、人工知能「ワトソン」の活用が進む。

2015年に、コールセンターに「ワトソン」を導入したのは、みずほ銀行の横浜市神奈川区の支店。導入から約1年半が経過した現在、効果は如実に現れている。

この導入事例では、同コールセンターでオペレーターが顧客からの電話を受けると、顧客とオペレーターの電話の会話を音声認識システムが文字データに変換して「ワトソン」に送信。「ワトソン」は顧客の質問を解析、最適な回答を導き出し、オペレーターのパソコン画面に提示する。会話の内容に応じて、マニュアルや店舗・ATM、ホームページ上の商品、サービスなど五つの区分で各項目上位10位の回答候補を表示する。会話内容に応じ回答候補となる必要情報が目の前のパソコンの画面に数秒ごとに自動的に切り替わり、映し出される。「ワトソン」がオペレーターと顧客との会話を分析して、適切な解答を探し出すという仕組みだ。

人工知能「ワトソン」の特徴を発揮するのに重要になるオペレーターの発話を文字数ベースで音声認識した確率は88%。目標の80%を上回る数値だった。また顧客の発話の認識率は62%。オペレーターが要件を復唱することで回答候補提示への問題はなかったという。回答候補の提示上位5位以内の正答率は85%。取り組み直後は70%程度だったという。

今後も新たな技術を積極的に採用して顧客利便性を高める。米ベンチャー企業のシンプルエモーションの技術を活用し、人の声の周波数から喜び、怒りといった感情を自動で測定し、オペレーターが対応しやすくする実証実験にも取り組む。

さらに受付内容も、近い将来に、電話での金融商品の提案など営業での活用も視野に入れているという。

下記サイトからの要約。
http://newswitch.jp/p/5725
http://www.fin-itnews.com/entry/2016/10/27/081904
http://www.sankei.com/economy/news/150414/ecn1504140003-n1.html


著者プロフィール

オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス 「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。

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