2016年06月13日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
世界中の注目を集める人工知能技術のなかでも「人工知能の革命」とも言われるのが、ディープラーニング(Deep Learning、深層学習)。機械学習の一種の手法であるディープラーニングが「革命」と言われるゆえんは、その精度の高さだ。ディープラーニングは、他の機械学習技術では達成できないレベルの精度を実現できる新機軸として期待されている。
そもそも機械学習はデータの背景にある傾向や法則を探り、現象の解析や予測をすることを目標としている。人間がルールを明示的に与えるのではなく、データから機械自身に法則を学習させるのが特徴だ。ルールで記述しきれない複雑な現象や、季節や時間などで傾向が変わる現象の解析に強みを発揮する。
第三次人工知能(AI)ブームが、メディアなどでクローズアップされ始めたのは2011年頃から。その中心にあったのが、IBMのワトソンとディープラーニング(深層学習)と呼ばれる新技術である。ワトソンが人工知能が商用で利用できることを世間に広め、ディープラーニングは、画像分野で精度を上げた。ディープラーニングの応用としては、グーグルの「AlphaGo」が囲碁の世界王者にも勝ち、話題となった。
機械学習の一種とみなされる一方、ディープラーニングが「革命的」と言われるのは、従来の機械学習と比べて圧倒的な違いがあるからだ。
たとえば、従来型の機械学習で色を認識するには、「色情報」を特徴にして識別させていた。この特徴は、人間が定義する必要があった。
ディープラーニングでは、学習データからマシン側が自動的に特徴を抽出する。この点が大きな違いとなる。つまり何に着目すればよいかを教える必要がなく、どんな特徴を利用すれば識別できるのかを自動的に学んでいくことが可能だ。
複雑な画像識別では、特徴を抽出していくことが難しくなり、実際に人が、猫とライオンの子供を識別する特徴を知ることは難しい。その点、ディープラーニングでは、非常に細かい部分まで特徴を抽出できるため、画像認識や音声認識の分野で幅広く活用されるようになっている。
ディープラーニングは、特定の課題を精度よく解くことを得意とするため、現在、3つの方向性で実用化が進んでいる。
1つ目は自社が提供するサービスの精度を高めること。米アップルの音声認識システム「Siri」、グーグルやバイドゥの画像検索エンジンなどが典型例である。2つ目はデータ解析のシステムやサービスの事業者にディープラーニング技術を提供する形態である。3つ目はディープラーニングを始めとする機械学習ベースのデータ解析インフラを提供する事業者である。
http://www.sbbit.jp/article/cont1/32033
https://thinkit.co.jp/story/2015/08/31/6364
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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