CLOSE UP コラム | 統計的モデルによる需要予測~大手楽器メーカー(後編)

統計的モデルによる需要予測~大手楽器メーカー(後編)

CLOSE UP 事例

2015年11月02日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

製品ごとではなく、部品単位での需要予測を可能に。

ビッグデータを活用した需要予測は、企業成長のために必須である――そのような判断から、KSKアナリティクスに「オープンソースRで需要予測モデルを作って欲しい」というオーダーをした大手楽器メーカーB社様のケーススタディをご紹介します。

KSKアナリティクスが、B社様の需要予測モデルを作成する上でポイントとしたのは、次の2点です。

まずは、同社の課題であった部品在庫を管理しやすくするためのソリューションを構築しました。

KSKアナリティクスでは、製品別だけでなく、部品別など任意の単位で需要予測ができるように設定したのです。これによって、楽器を構成する個々の部品ごとに在庫管理がしやすくなりました。

また、予測モデルをパラメータ化しました。

トレンドや季節傾向は、常に変動します。いくら素晴らしいモデルを作成しても、その変動に対応できなければ「絵に描いた餅」でしかありません。

パラメータ化することで、モデル作成時の傾向が変化した場合に、現実の実績データに則して更新することが可能になります。予測モデルを提出するだけでなく、実際の担当者が必要に応じて対応できるソリューションを盛り込んだのです。

 予測モデルをシステムと連動させることで在庫発注を自動化。 

B社様は、最終的に、オープンソースRで作成された予測モデルをサプライチェーンシステムと連携させ、在庫を自動発注できる仕組みを構築しました。需要予測の精度を上げたことで、個々の現場に明らかな成果が見られました。

まず部品在庫管理では、3ヶ月先の部品発注が予測できるようになりました。それまでの属人的な部品在庫管理で生じた過剰在庫、あるいは在庫が品薄になることによる機会損失の問題も圧倒的に改善されました。不良在庫が少なくなり、欠品を減らすことにも成功したのです。

実際の運用が始まった後も、KSKアナリティクスでは、予測モデルの正確性をモニタリングしています。B社様から定期的なフィードバックを受けながら、日々、予測精度を高めています。

 ビッグデータ活用は、目的を明確にすることが成功の鍵。

B社様の成功の要因は、目的が明確だったところにあります。

「オープンソースRをつかって需要予測の精度を上げたい」という明快な指針があったからこそ、KSKアナリティクスからも具体的なご提案ができました。

巷間言われる「ビッグデータ活用」とは、数値という厳然たるリアリズムにもとづいた情報(知見)です。

たとえば、社員を鼓舞するために売上目標を掲げるといった施策とは対照的に、ビッグデータは、企業が抱える課題に対する具体的なソリューションになりうるものです。

だからこそ、ビッグデータの活用は、企業が掲げる課題や目標によって大きく異なります。

「●●の在庫を減らしたい」「●パーセント、売上を上げたい」といった明解な目標があるほうが、ビッグデータを活かせるのです。

ビッグデータという数値によって社内のあらゆる事象を明示化することで、成果が見えやすくなり、ひいては社内的な要求も通りやすくなることでしょう。

現在、需要予測にビッグデータという科学的なアプローチを導入しているのは、まだ一部にとどまっています。多くの企業では、いまだ経験と勘にもとづいた人海戦術で行っています。

ビッグデータを活用した需要予測は、B社様のような活用方法だけでなく、工場での生産合理化、経営、マーケティングなど、幅広く応用してご活用いだたくことができる手法です。

全体的に導入が少ない現在だからこそ、ビッグデータ活用のチャンスといえます。

【ケーススタディまとめ】
―月次の売上数量をトレンドと季節傾向に分解し、モデル式を作成。将来12ヶ月間の月別の売上を予測。
―予測は製品の発売前から適用可能に、機種別、製品別など任意の単位で予測可能に。
―予測モデルをパラメータ化、モデル作成時の傾向が持続しないと予想される場合があるため 実績データの蓄積に応じて予測を更新可能に。


著者プロフィール

オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一

1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス 「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。

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