2016年12月26日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
ディープラーニングの一歩先を行くデータ解析手法として注目されている手法に、データの集合をトポロジーと呼ばれる幾何を使って解析する、位相的データ解析(TDA::Topological data analysis:トポロジカル・データ・アナリシス) がある。
ディープラーニングは、膨大なビッグデータから物体概念や音声や画像を自動的・自律的に獲得できる可能性をもった手法である。それに対して位相的データ解析は、人間が脳や五感で得た周囲や身体感覚の情報を、数学の一領域であるトポロジー(位相幾何学)の知見から応えるアプローチである。
人間の脳は、当たり前のように低次元のデータ対象から、高次元で、広域的なデータ構造体を形成する能力を持つ。
位相的データ解析が解明しようと取り組んでいるのは、たとえば、人間が 眼球(網膜)で得た2次元の視覚情報データから3次元の空間構造認識を形成する際に、「どのようにして低次元のデータ構造で表現される対象(物)から、高次元のデータ構造体を獲得するのか」といった問題である。
位相的データ解析では、データの集合をトポロジーと呼ばれる「柔らかい」幾何を用いて解析する。同様に幾何学を扱っていても、情報幾何学では微分幾何という「硬い」幾何学を用いているのとは対照的だ。位相的データ解析では、「柔らかい」幾何が高次元データを形成する。
Googleが機械学習システムTensorFlowをオープンソース化し、IBMも自社の機械学習コードSystemMLをオープンソース化した。また、Facebookは人工知能ソフトウェアを動かす強力なサーバーを無料開放している。このように大手IT企業は、ディープラーニングを自社製品に組み込むために巨額の投資をしている。これらの企業に共通しているのは、ソフトウェアフレームワークとライブラリを開放して業界全体の進化を目指している点だ。一方、スタートアップがもたらす新たな成果によって、人工知能は数年前には解決できなかった複雑な問題も解決できるようになっている。そんななか、シリコンバレーを拠点にビッグデータマッピング技術を提供するAyasdiが、位相的データ解析分野で100億円近い資金調達したことは、話題を集めた。
位相的データ解析は、画像認識、データ・マイニング や コンピュータ・ビジョン(CV)の分野での応用を念頭においた新しい研究領域として、今後、ますます注目が集まっていくことが期待されている。
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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「ボット(BOT)」とは、人間がコンピュータを操作して行う処理について、人間に代わって特定の命令に従って自動的に実行するアプリケーションプログラムを意味する。主にインターネットにおいて単純な繰り返しタスクを自動で実行するプログラムを指し、ボットによるタスク実行速度は人間が手動で行う場合に比べて遥かに高速に実行される。
「Apache Hadoop(アパッチ ハドゥープ)」とは、 ビッグデータを複数のマシンに分散して処理できる、オープンソースのプラットフォームである。
データを蓄積する仕組みの構築や運用、データ構造の可視化やデータの意味管理などを行いながらデータを適切に管理することで、データの信頼性・整合性を確保すること。
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